おかわりください

観劇したりイベントにいったりの記録です。基本的に自分メモ

坂の上から見えたもの 舞台「炎の蜃気楼昭和編 紅蓮坂ブルース」 

終わった…今年のミラステが終わってしまった…。

無事に坂の幕は降りてその姿が消した。全てのスタッフの皆さん、キャストの皆さん本当にお疲れ様でした!素晴らしい苦しさをありがとうございました!!!!


前回も書いたけど、やっぱり千秋楽を迎えてくれないと苦しい時間だった。ミラステ期間中はおかしくなるからごめんなさいね、とそれとなく言っておいたつもりだったけれど「だんだん要介護っぽくなっていくから心配してた」*1「もう、終わったのかな?大丈夫?最後まで見届けれてよかったね」とか友人各位からあたたかいお言葉を頂戴した。

自分では元気に仕事をこなして*2支障がないようにしていたし、今年発症してしまった腰痛のケアもしながら割といい感じに観劇できたと思ってたけどやっぱりはたから見たらおかしくなっていたみたいだった。

そもそもなんというか上手い感想も何も出てこないのでした…このエントリを書こうとしている意味合い…。

今回見終わって、少し今時間を持って一番強く思っていることは
「これを最初にしたかった」

ということです。ミラステも、ミラージュも何もかもを。これを一番最初に見たらどういう気持ちで受け止めたのだろう。その時私はどんな気持ちで見て感じたのだろう。
みやまさんのブログを見て心底そう思った。

goodbye-talkie.hatenadiary.jp
全部貼りたいのですけどそれもどうなのか、なのでまず千秋楽を見終えたみやまさんの記事を。ここから是非遡ってみて欲しい。
あの二人のこと、直江のこと、夜叉衆のこと。きっと私が本編をリアルタイムで追いかけていた時のどうなるんだろう!これからどうなっていくんだろう??ねえ、ここで終わり?!えっ?次の巻いつ出るの??っていうあの死にそうな気持ちをミラステを見て体感できているのが凄く羨ましい。桑原先生は凄く刊行ペースが速くて、今思えば本当に走って書いておられたんだなあ…止まれなかったんだろうな、と思う。けれどあの頃の私は明日にでも続きが出てくれないとこんなの耐えられない!!という感じでした。余談ですけど、毎月乙女ちっく通信をチェックしていたあの頃が昭和ではなく平成だったということに驚きを隠せていない…

私にはどうしてもこの先の未来である本編と本編で語られた昭和編の皆の行きつく先を知っているという大前提がある。
そうじゃない初期衝動として受け止めてみたかったな…いっそ全部何もかも忘れてしまってみる事はできないんだろうか…とアレな事を考えてしまってから、うっ…これって…うっ…っ…。景虎様…*3
キャス変の事も含めて全て忘れ初めて受け止める景色というのは絶対自分には見えない世界。それを体験してみたいなあという願望はどれだけ望んでも手に入らないのです。

 

前置きが長くなってしまったけれど、今回のミラステ、紅蓮坂。
前回の夜叉衆ブギウギがオムニバス舞台だったこともあるので、二年ぶりの本編上映という感じ。
先日も書いたのですけど

otterpika.hatenablog.comこの坂はいったいどこに続くのだろう、そこに何があるのだろう、と思いながら毎回見ていたように思います。千秋楽や、その前日のアフトでキャストさんが「自分が探していたものを客席の皆さんが教えてくれた」(ニュアンス)的にお話されていましたが、ミラステにおける客席からの熱の役割は本当にすごい。多分私達客席は、あの場所に居合わせた「目撃者」なんだと思う。
ブギウギに出てきた景虎様の友人となった新聞記者の滝田のように、その時代で彼等を見てしまった人間=客席。これが戦いの場もそうだし、感情をぶつけられるシーンでも「目撃」しているのだから本当につらい。重たいものをそのままぶつけられてしまう感覚が本当につらい。でも目が離せない。どうなってしまうんだろう、って変な言い方だけれどそれこそ燃えているもの、火災現場を見てしまったような気持ちというか…この炎はこのまま燃え落ちるのか、辺りを飲み込むのか、という気持ちでずっと見ている。

前置きとして「全てを忘れて、初めて見ることをしたい」と書きました。

矛盾しているのだけれど紅蓮坂観劇中はどうなるんだろう…どうなっちゃうんだろう…ってずっと手を握って、何かに縋り付きたい気持ちだった。紅蓮坂まで、そしてその次の原作も読んでいるし、本編も読んでいる読者であるのに初見を済ませてからも毎回不安に押しつぶされそうで、ああ…今回こそ今日こそ加瀬さんが死んでしまうんじゃないか…と思いながら見ていた。それくらい毎回、どの公演を見ても鬼気迫るものがあって、カテコの挨拶に真ん中に出てくる翔さんだが他のキャストと比べて憔悴しているのも加瀬賢三そのものだった。

脚本の事:

今回のミラステは「紅蓮坂ブルース」と銘打っているものの、紅蓮坂ブルース単体ではなく(夜啼鳥、瑠璃燕は単体です)無頼星、悲願橋、そして紅蓮坂の3ブルースのミックスです。この前の記事で無頼星忘れてしまっていた。ごめんね。
これを2時間ちょいにおさめてくる脚本の方本当にブラボーでしかない。どうしてその3つなのかというのは関係性と話の進行から外してはいけない部分をきちんと打ち出すためで、ここだ!っていうポイントを外さずにまとめてきた脚本は本当にすごいと思いました。ど頭の直江を景虎様のシーンやレガーロの事。見ている側が欲しい物がぎゅっ!とつまっていたし、何より無頼星、悲願橋のエピを入れてくれたことで話の繋がりがスムーズでした…これは本当お見事。ミラステは全て原作そのままということもなく、台詞の言い回しだったりが少し変わっていたりする部分があるのだけれど。それはきっと生身の人間が言う言葉として変えられているのだろうな、という感じ。何より舞台として見た時に感じる「すごい、ミラージュだ…」っていうあの感覚をきっちり打ち出してくれた脚本、本当にありがとうございました。あそこ見たかったよおお、というのも勿論あるんですけれどそれは優秀な心のフォトショップと脳内動画編集で乗り切る。一瞬でも天目山のシーン入れてくれて本当に救われてから後のデスロード…嫌いじゃないよ…。あの天目山のところからの上げて落とす感じ桑原先生とシンクロしてらっしゃる。

演出の事:

脚本の事、でもあるのかなと思うのですが、非常にスピーディにばんばん進む感じに初見は正直驚いてしまって、もう少し、もう少しちょっと余韻が欲しい、って思った事は事実。少し今までのミラステより間がないというか、心情を飲み込む暇もない…と思ったのですがそもそも展開がそんな暇がないのだった…。あと多分レガーロに居ないからですね…レガーロで「ビールください」「学生は帰れ」みたいなやり取りがもうない…。ああっ…あの加瀬さんと尚紀の専用の無駄に意味深なBGM今回なかった??うう…あのやり取りももう出来ないと思うと本当に切ない…

目撃者である私達が速い!うわっ!となる速度で自体はどんどん進んで行き、その中で生きているキャラクター達の心中察するに余る…。

アクションシーンも満載だった紅蓮坂。あちこちでいろんなアクションが勃発するのですけど、ばらばらの場所で戦っている人達のをそれぞれ描いていると時間もかかる→同時にやる! これ、すごかった…景虎様と直江が別々の場所で戦っている所を同時にやるの天才かと思った…一回二人が一緒に戦って調伏するシーンが前半にあるから余計に際立つのだけれど、舞台を上と下、右と左に割って、同時に別の場所で違う相手と戦う直江と景虎様の調伏シーンを重ねるのが本当に天才でした。ありがとうございます。バイ!って同時に言うのもそうだけれど、その前にある力を放つシーンがね、同じ動き、ポーズを同時にしてそれを照明がくっきり映し出すんですよ…感謝しかない。変身ポーズがシンクロしてるみたいな感動(戦隊出身主従)あれ今までは無かったんじゃないかな…。すごく好きだった…早く円盤で見たいです。

そして織田のノッブ様のあれです…すごいです…一瞬で跡形もなく上杉の陣でもあった神社を壊滅させた信長の必殺技。これが凄かった。舞台上で対峙した夜叉衆だけではなく観客にもその威力を示すために、真っ白な閃光が当てられて、浮き上がるのは信長だけ。眩しい!てなった次の瞬間松川神社は消えていたのです…。こういうの視覚的に、こうしたら作れるってなるのは経験値とかセンスとかなんだろうか。すごかった…本当神の所業でした。それでも私はミラステの織田組がね…なんだかとっても好きなんです。景虎様過激派だけれども。

BGMの事ですけれど、あの尚紀と加瀬さん専用BGMは無かったように思うけれど、最後に美奈子がくるあたりにかかるBGMがすごくドラマティックで好きでした。

 

千秋楽の事:

カテコの挨拶など色々あるけれど、私が千秋楽で一番ぐっと来たのは最後の直江と景虎様のシーン。美奈子を連れて遠くに行けという景虎様に何故ですか?となる直江。上手と下手離れていた場所から遠くに行け、離れろと言葉にするたびに直江に近づいて距離を縮める景虎様は言うことより行動の方がよっぽど本心に近いんだ。

前回の記事にも書いたけど直江に自分の養父母の調伏をしろだりなんだり言って突き放した後、笠原家を焼き打ちにした命を出したやつはどこだ?と毘沙門刀を持って単身で乗り込むとか本当その行動のほうがよっぽど直江に優しい…。

遠くに行け、離れろ、と言いながら近づいていくとか本当な…と目頭が熱くなってしまう。ここでも、その前の虚像なんだ、虚像なんかじゃないのシーンでも景虎様の方が直江を振り払っているようですけど、まず今回冒頭で直江が景虎様振り払ってるからね…あぁいうことしちゃうと倍返しですよ…。あと遠くに行けは、直江を守りたいからなんだよね…うん、知っている…となるけれど当の直江にそうは言わないから伝わらない!!伝わらない400年!!もう!

というシーンの千秋楽が凄かった。

もう直江に口をはさむ余地など与えない!!とばかりに畳み掛けてくる。台詞も部分的に重なってきていたし、直江が二回同じ台詞を言ってしまった(と思う)部分も、一度言ったけれど伝えられなかったから、のようにも見えた。

それでもなお景虎様は行け、と言う。信長の破魂波で直江の魂を打ち抜かれたくないんだ…生きろって言うんだよ、景虎様は…。ラストシーンは原作と舞台では少し異なります。私が舞台ではどうしてくるんだろうと楽しみにしていた直江の独白みたいな部分が無かった…いや、でもあそこ翔さんの加瀬さんへの宛書っぽかったから、あそこはあらまきに言って欲しかった…って一番思ってたところだったからよかったのかもしれない。

直江はラストに「解放してくれ」と言いますけど、この台詞聞いた瞬間に私の中の時間が一気に巻戻った…や、めてくれ…思い出させるなああああああって毎回声を殺して泣いていた…。直江の表情が切ないのと苦しいのと、でもそれだけじゃないのを称えていて自分の拳をどこかに打ちつけたくなっていた。それも出来ない。ただ見てるだけしか許されていないし動くこともできなかった。

景虎様は「生きろ、生きて生きて生き延びろ」って言う。

そのどうしても直江を死なせたくない景虎様の気迫みたいなものが千秋楽は凄く強くてただただ圧倒された。ひとの気持ちって強ければ強いほど願うがかなうのか、と言えば確実な確証みたいなものはないのかもしれないけれどそれを見てしまったり、受け止めてしまった人に何かを残す。

「どうしてそんなにまでして生きなくてはいけないんでしょうね?」と以前やどかりボレロで直江が言っていたけれど、それに対して景虎様は「おまえが生きようって言ったんじゃないか?!何があっても生き延びるって」と言っている…あぁ…そうなんだよね…と胸を掴まれたような気持ちになりながらラストシーンを見ていたら燃えるような紅い光と共に調伏された。ドセンで見ると調伏の時本当に景虎様怖いです。調伏毎に命を削ってる…本当に限界が近いんだ、という景虎様はそれでも直江を遠くに行かせることで守りたいんだ…その先に何があるのかはこの先刊行される最終巻待ちなわけで、概要は知っているけど詳細は知らない世界に続いてしまったエンドです。

どの回も素晴らしかったけれど、千秋楽は本当にラストシーンの景虎様の気迫がすごかった…素晴らしいラストをありがとうございました。

 

やどかりボレロのこと:

 前作夜叉衆ブギウギにて演じられたやどかりボレロ。桑原先生の書き下ろしであり、原作にはない舞台オリジナルの話です。ですが、これが今回の紅蓮坂ですごいキーになっているなと見ながら感じていた。見返して確認したくなったのはやどかりだった。

どこが、って具体的な事は上手く言えないのだけれど、直江の葛藤、苦しみという点においてもやどかりボレロは笠原尚紀になった時、その前の宿体を失ってからの事が描かれています。紅蓮坂で尚紀が完全に失われ尚紀になったのだとしたら、やどかりが尚紀の誕生であり、紅蓮坂が尚紀の消失。

「お前たちの一番大切なものはなんだ。それを我らが奪う!」

そう言われた後、尚紀が黒いコート黒い服に身を包んで黒い革の手袋をはめるのが後方に浮かび上がる。もう居ないんだ。秀子さんとお母さんの着せ替え人形をしていた尚紀はもう居ない。アイスクリームでも食べて待ってます、て言ってた尚紀はもう居ない。何だかんだ言いながらも景虎様はきっと直江が尚紀でいるのを見ていて、少しでもあったかい時間を過ごしているのを微笑ましく思ってただろうに、もう尚紀はいないんだ。紅蓮坂が直江の心情を追う部分もあるからこそ余計にやどかりボレロはミラステに置いて本当にキーポイントとなったのだろうな、と。そしてそれが原作者の桑原先生が書かれたという事で、脚本家の方にとっても紅蓮坂は挑戦というかアンサーみたいなものだったのかもしれない。
千秋楽のことで書いた景虎様の畳み掛ける感じ、あれはやどかりボレロにある裁判シーンの直江にも重なる。あの裁判シーン、あれは景虎様が自分で作り出した世界だと思っているのだけれど(裁判官の声が翔さんだし)あの時の直江の畳み掛けてくる感じと今回の景虎様の絶対自分の意思を貫く、もう決めてしまったんだ、という姿勢も凄く酷似している。あの時、直江は「そうしたらあなたは私だけのものになる」と言っていたのですよ…紅蓮坂の円盤が出たらやどかりと続けて見てお腹壊したい…。

今回から見た方はやどかり絶対見て欲しいです…。キャス変があってもそう思えるだけのものがあったんだ…。

 

この坂を登ったら何があるんだろう、そこから何が見えるんだろう。

そう思って迎えた千秋楽でしたが、私にぼんやりと見えたのはもしかしたら涅槃の月だったのかもしれない…昭和編ラストまでやりたいと言ってくれているキャスト、スタッフの皆さんの言葉を糧にその日までまた体力と気力、資金を蓄えておこうと思います。本当に苦しいけどねー見たくないとかじゃないんだよねー…。

長くなったのでキャストの事とかキャラのあれこれはまたかけたらいいな、と思います。

残り香のように展開されるミラステキャストによる美奈子と景虎様のシーンのパロ最高過ぎるので、ねえ!直江もあるんでしょ???って気持ちで全力待機してますからね☆

 

 今年も、最高の苦しさと幸せをありがとうございました!!!

 

*1:そういう仕事をしているので笑うしかない

*2:ミラステ期間中一度仕事のために戻ってる。私の地元は政宗様のお膝元です。おかしい

*3:わからない人は本編を読んでください